ここ数年で、プロネイリストさん向けに
「サロンワークとは別の収益を立てるために、スクールや講師、コンサルを始めよう!」
という発信をされる方が一気に増えたように思います。
一昔前であれば、「ネイルスクール」といえばほとんど大手のネイルサロンチェーンしかやっていなかったのですが、
今はSNSの発達によって、個人の先生が講座を作って生徒さんを集めることもできるようになりました。
多くのネイリストさんがセミナーを「受ける側」からセミナーを「開催する側」に回ったり、講師やインフルエンサーに憧れ、発信し、日々影響力をつけています。
私自身も例外なく、現在までSNSを起点として講師活動を長らく行なっています。
今日はそんな「講師」という仕事について、裏側も含めてお話していきますね。

「講師」には、向き・不向きがあります
いきなり身も蓋もないことを、すみません(笑)でも、とても大事なことです。
講師という仕事には、向き・不向きがあります。
まず向いている人というのは、
・求心力と存在感があり、生徒さんに背中を見せながら引っ張っていける人
・マネジメント能力に長けていて、生徒さんを後ろから支えてあげられる人
の2種類です。
前者は、圧倒的な実績で一つ一つの言葉に説得力と力強さがあるため、SNS発信などで影響力を持ちやすく、喋っているだけで生徒さんが集まってきます。
一方で後者は、話を聞いてあげたり気持ちを受け止めながらも、そっと背中を押してくれるので、教室がオアシスのような場所になります(笑)
逆に向いていない人というのは、
・人を育てたり教えることにプレッシャーを感じたり、面倒だと思ってしまう人
です。つまり個人プレイヤーと呼ばれる人で、これって個人ネイルサロンのオーナーさんにも当てはまることなんですよね。
現状を維持することで安心できて、出世や上昇志向も強くなく、人の育成とかに全く興味もなくて「そんなことより目の前のお客様の爪をきれいにしてあげるほうが好き」という方です。

誤解をしないでいただきたいのは、向いてないから講師はダメとか、向いてないからやらないほうがいい、ということでは全くありません。それでいいんです。
私の友人でも、「出世欲は全く無いけど、でも講師の仕事は好き」という方もいれば、
ネイリスト歴が15年以上になるにも関わらず「私は講師向いてないから、サロンワークだけやりたい」「一度少しだけ講師をやってみたけど、向いてなかった」と言っている方もいますからね。
どんな仕事でもそうですが、活動の中で「やりがい」や「楽しみ」を見つけられなければ、続けていくことは難しいのです。
あなたにとっての「やりがい」とは?
例えばあなたは、サロンワークで「やりがい」を感じたり、「楽しい」「嬉しい」と感情が動く時はって、どんな時ですか?
お客様に喜んでもらえた時。
施術がすごく上手くできた時。
持ちの悪かったお客様がちゃんとジェルがついた状態で戻ってきてくれたとき。
新規のお客様が再来店してくれた時。
時間ぴったり、もしくは余裕を持って施術を終わらせられた時。
・・・など、いろいろなシチュエーションがあるかと思います。
私はもうサロンワーク歴より、トータルでは講師をしている年数の方が長くなっていますが、それは自分自身と何度も対話をする中で、「私はサロンワークよりも、講師の方が向いている」と思って進んできたからです。
私にとってサロンワークは下積みでもあり、つらいと思ったことも沢山ありました。
独立してからのサロンワークは楽しい思い出ばかりですが、サロン勤務時代は売上に対するプレッシャーや、とにかく20代前半の頃は本当に若かったので、お客様にも気を使っていました。
なのにクレームばかりで笑、先輩に怒られたり、人間関係も円滑にならなくて、毎日サロンに出勤するたびに、心をすり減らしていたんです。
一方でスクール講師で「つらい」と思った経験はほとんどありません。
もちろんサロンワーク時代に精神面でもとても鍛えられたからというのもありますが、
「生徒さんを上達させなければいけない」
「生徒さんを検定に合格させなければいけない」
という講師としての責任やプレッシャーとも上手に付き合えるようになり、生徒さんと一緒に合格を目指すという環境が私には合っているのだと今でも思っています。
「自分」ではなく「生徒」ができるようになることがゴール
講師の仕事というのはとても頭を使う仕事で、「教えかた」を誰かに教わることができる機会もほとんどありませんし、「教えかた」を誰かに教わったとしても、その通りに生徒さんを上達させる力が身につくかどうかはまた別の話だったりもします。

自分の持っている技術やスキルを細かく分解し、「言葉」と「動き」で、一人一人の生徒さんに伝わるように伝えて、生徒さんが実際にできるようになるまで、根気よく向き合わなければいけません。
「自分ができる」ことではなく、「相手ができるようになること」が講師にとってのゴールなので、「なんでこの人は出来るようにならないんだろう・・・!」とモヤモヤしたことも、一度や2度ではありません(笑)
カリキュラムや資料のままデモをしたり説明をしたからと言って、全員その通りに上手くなる、なんてことはなく、
筆の持ち方や指の支え方、椅子に座る姿勢や向き、など、「自分はいつも自然とやっていること」でも、生徒さんにとってはとても難しかったり、理解ができなかったりするので、それを相手が理解できるように言語化して、言葉で伝えていくスキルは講師として日々磨き続けなくてはいけません。
本当に地道だし、大変なこともありますが、入学当初は右も左もわからなかった生徒さんが、授業や練習を重ねて上達していき、スクールの終盤ごろにはすっかりプロのネイリストの顔つきになっていたりして、
そういう「人の長期的な成長」を見守り、生徒さんのこれからの人生が変わる瞬間に立ち会えていることに、何よりもやりがいを感じるところですよね。
まとめ
サロンワークの経験が積み上がり、これからのことを考えたときに「講師」という仕事が選択肢に入ってくるネイリストさんは多くいらっしゃると思います。
ですが、ビジネス的な視点だけで、収益を上げたくてとか、サロンワークをゆくゆく減らしたいからという理由で、安直に講座やスクールを作り、「講師」をやろうとしても、
・うまく教えられない
・上達させてあげることができない
・講座やカリキュラム作りが思ったよりも大変
という壁に必ずぶつかります。
そのくらい、サロンワークと講師の仕事は別ベクトルなんですよね。
講師をサロンワークの延長として考えるのではなく、今までの経験を生かしつつ活動ができる「転職」と考えた方が自然かもしれません。
ただ、スクールは生徒さんの集客が安定しづらい性質を持ち合わせているため、サロンワークと並行しながらスクールをやっていくのがおすすめではあります。(複業ですね)
また、考えてみた結果「講師はやめとこう」となり、スタッフを雇用してサロンの拡大に舵取りをし、現場を少しずつ離れていくというのも全然アリです。
ネイルという仕事に長期的に関われる方法はたくさんあるので、ベストな道が見つかるといいですね!